アリの巣の生きもの図鑑

アリの巣の生きもの図鑑
  • 発行形態 :電子書籍
  • 電子書籍発売日:2023.09.29
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作品紹介

世界初! アリの巣でアリとともに生きる「好蟻性昆虫」を網羅した図鑑。
目撃すら難しいような貴重な生態の瞬間を美しい写真で紹介し、世界中の昆虫研究者から称賛を集めた伝説の図鑑が、ついに電子版として刊行。
共生という生態の不思議さに目を奪われ、自然界の神秘が胸に迫る一冊。
英文解説付き。

メディア掲載レビューほか

アリそのものはよく知られ、我々にとっても身近な昆虫の一つである。しかし、そのアリに生活史の一部、 もしくは大部分を依存して暮らす「好蟻性生物」はほとんど知られていない。

本書は日本産好蟻性生物 13 目 44 科 166 種を網羅的に掲載した初めての画期的な図鑑 である。しかも図版の大部分が標本写真ではなく、野外で撮影された生態写真という驚異的な図鑑となっている。

先ず、甲虫好きの方々は本書を開いてすぐクロオビヒゲブトオサムシの美しい生態写真と標本写真に圧倒されるだろう。他にもチャイロホソハナムグリや好蟻性ミツギリゾウムシ 3 種(アカオニ、キバナガオニ、ツヤケシオニ)といった憧れの甲虫の標本写真が掲載されている。これがまた実にカッコいい。

本書の真髄はなんと言っても好蟻性生物の生態上重要な場面を切り取った圧倒的な写真の数々である。ヒメバチやコマユバチ、ノミバエの仲間がアリに寄生する瞬間やアリに給餌してもらうアリヅカコオロギなど、驚嘆すべき生態写真が多数掲載されている。

さらに、日本各地で絶滅が危惧されている好蟻性シジミチョウ科についても美しく物語性のある生態写真と共に詳細に解説されている。

それにしても、これらの生態写真の一枚一枚にかけられた労力はいかほどのものだったのか、想像を絶する。 写真によっては数時間はおろか数日あるいは準備期間を含めて数年を要したものもあるだろう。これには本当に頭が下がる思いがする。

また、各種の丁寧な解説には英文が併記されている。これは日本語を解しない海外の方向けの配慮とのことだが、我々はもちろんのこと特にこの分野を志す学生諸氏にとって英文表現の参考書として役立つことと思われる。 素晴らしい写真付きの英文表現の参考書として見れば、 こんなにお得感のある本も珍しいのではないだろうか。

本書は図鑑ではあるが、著者それぞれのコラムのどれもが読み応えがあり、読み物としての面白さが加味されているのも特筆すべき点だろう。このコラムの面白さをちょっとでも伝えたいのだが、これはやはり手に取って是非読んでいただきたい。

最後に長年にわたる研究と観察の成果を広く目に見える形にされた著者の方々に心からの敬意を表したい。 世紀の図鑑、とはまさに本書のためにある。多くの方々に、多様で珍妙な生きものたちの生き様に心躍る体験をしてもらいたい、と思う。 (中峰 空 Hiroshi NAKAMINE)「きべりはむし」35 (2), 2013.

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