さみしくなったら名前を呼んで
定価1,540円(本体1,400円+税)
発売日:
※価格、発売日は紙書籍のものです。
- 発行形態 :単行本
- ページ数:224ページ
- ISBN:9784344026339
- Cコード:0093
- 判型:四六判
この作品は文庫または新装版でもお楽しみいただけます。
作品紹介
いつになれば、私は完成するんだろう。
踊る十四歳、孤高のギャル、謎めいた夫妻、故郷を置いてきた女……
律儀に生きる孤独な人々の美しさをすくうショートストーリーズ
<書き下ろし3編を含む、11編を収録した短編小説集>
たった一つのアクションで、世界が変わることを期待して、その期待は何度も何度も裏切られた。
数え切れないくらいのシチュエーションで、あたしはこの日常からするりと脱出できる日を夢見た。
一足飛びで大人になれる日を。心から自由な気持ちを味わえる日を。
(「走っても走ってもあたしまだ十四歳」より)
ケイコは努力の人だ。
語学も猛勉強の末ものにしたし、大失敗を繰り返して自分に似合う髪型やファッションに辿り着いた。
そうやって誰からも素敵なひとと思われるようになったいまでも、
ケイコはまだどこかに、おぼつかない少女の気持ちを残している。
(「ケイコは都会の女」より)
わたしたちはなにも知らない方がいいし、なにも出来ない方がいいのかもしれない。
古来言われているように、可愛くて少しおバカさんくらいが、楽に生きられるというのは真実なんだろう。
加賀美の娘にちらりと目をやって、そんなことを思う。
そして加賀美は、手遅れになる少し手前で軌道修正できた、わたしの姿みたいだ。
(「遊びの時間はすぐ終わる」より)